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第25回 日本伝統俳句協会賞
「吉野拾遺」   田中祥子

おほどかに鳶の舞ひゐる初御空

深吉野の秘仏の色に竜の玉

一枚の残雪かづき蔵王堂

言霊か峡をつらぬく雪解川

千年の神杉春の時雨かな

狩衣は金の摺箔国栖の舞

すめらぎの淵吹きあぐる春の雪

雛の灯に吉野拾遺の話など

山宿の灯のほのぐらき雛納

雉鳴くや谷の向かうに如意輪寺

そばだてる崖より渓へ花吹雪

陵を遠巻きにして朧の灯

鯉はねる音のしてゐる桜の夜

千本の桜の底へ寝落ちけり

石楠花や林泉に舟石獣石


人住みし名残三椏花盛り

切岸の岩噛む葎若葉かな

神杉の幹を離れず夏の蝶

串刺しの焼き並べたるさくら鮎

田を植うる象の小川の水を引き

本堂に置きある団扇借り申す

葛餅や驟雨見てゐる吉野建

北面の後醍醐陵の露けしや

吉野紙手燭に透けるうすもみぢ

数珠玉の泥かぶりたる筏堰

朴落葉大きく風をとばしけり

象山の風の中なる干大根

紙を漉く国栖の川風かこちては

西行の像へさし込む冬日かな

瀬の音の暮れきつてをり牡丹鍋




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第25回 日本伝統俳句協会新人賞
「あるがままに」   進藤剛至

宇宙との約束のごと一葉落つ

盆休独身寮の声しづか

てのひらを広げるやうに揚花火

私にも虚子にも落つる一葉かな

走りても走りても秋高きこと

秋晴や象はなんども鼻上げて

大花野やがて虚空の入口に

とんばうの風の憂ひに止りをり

片恋や林檎ころんと揺らしゐて

今朝の冬ホットミルクの膜が口

海底に平家の国や初時雨

星々の吐息を吸つてゐる冬木

店員と長き話を小春かな

大綿の憩ふカーネルサンダース

言訳の息のまことに白きこと


枝先の広々として枯木かな

のつと立つ畳のかをり初稽古

前髪の光をそろへ初鏡

貝殻のさびしく散れる春の海

紋黄蝶とまるところを探しをり

ハンガーにかかるハンガー春の昼

猫の恋千年後にもありぬべし

芯もなく輪郭もなく春の風

パンジーのぽつてり昼をのせてをり

葉桜に息吹く源平古戦場

そよ風に蜘蛛の交尾の終りけり

大夏野へリコプターの音去りて

氷菓いま水に還つてゆく気配

ご祈祷を終へて社務所に夕涼し

晩夏かな紙の失せたる掲示板




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第25回 日本伝統俳句協会賞佳作
第1席 「芦屋春秋」  田中節夫
第2席 「網戸の目」  山本素竹
第3席 「北見」     音羽紅子
第4席 「北国の旅」  介弘紀子
第5席 「嘴ふれて」   尚山和桜

※佳作作品及び選考経過は「花鳥諷詠」3月号に、本選選者の感想は同じく4月号に掲載されます。


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