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第24回 日本伝統俳句協会賞
「瓔 珞」 大谷 櫻

土器を湖へ一投年新た

日は亭午公魚釣に富士晴るる

灯ともせば瓔珞貴に古雛

雛飾り今宵は月も匂やかに

みづうみの波音暮るる雛灯す

雛の夜の灯とぼしき平家村

花かんざし賜はる仔馬摩耶詣

松籟に夕べの落花とめどなし

みづうみの雨しぶき来る杉植うる

藤の花奔湍の生む風にゆれ

奥琵琶の岬の遅き茶摘かな

峠路の風に長けたる夏蕨

花桐の梢は白き雲にふれ

新緑の遠野へ河童探す旅

おしら堂卯月曇の昼の燭


立葵蜑の一村人を見ず

隠れ里果つる岬や青胡桃

星一つ薄うすとあり蛍とぶ

杉山に蛍の闇の深さあり

川に舞ひ田へも舞ひゆく蛍かな

山荘の松籟つのる夏炉焚く

蓮見舟風吹くままに漂はせ

港の灯華やぐ波止の地蔵盆

無花果をもぐや湖の日こぼしつつ

帰り花運河しきりに鰡跳ばす

立冬の星のあかるき夜明けかな

音も無き星の高野の冬安居

織糸の彩り干せる庭小春

藁屋根の苔の青さよ朝しぐれ

年惜む蕪村の塚に古都望み




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第24回 日本伝統俳句協会新人賞
「季節とともに」   譽田 文香

待春の空に浮くやう沖の船

その先は光にとけて寒の海

夜の闇掻き混ぜてゐる春一番

君の目に潤む我ゐて水温む

南国の大気纏ひて来る燕

八重に咲く石南花匂ひ立つ山野

命の音静かに響く夜の飼屋

葉桜を揺らす東京湾の風

葉桜の城址は風の独り占め

代掻くや映る夕日を揺らしつつ

星屑を宿して夜の代田かな

若竹の青き静寂に染まりゆく

その奥に河童居さうな五月闇

玫瑰や今は静かに海は青

はんざきの一万年のマイペース


蝉生れて羽の色付くまでの黙

夕菅の星降るやうに咲く山野

暗闇に潜むもの見せ稲光

ふと揺るる門火のあたりある気配

光る眼に光る指先踊る影

瞬きといふ静けさの星月夜

山峡を埋め尽くす白蕎麦の花

太陽の光に還る露の玉

心眼を研ぎ澄ませ見る霧の先

時を止めたるかに蔦の無人駅

山峡に生き全身に秋の声

木の葉髪届かぬ想ひ数へつつ

ふりかへる過去ふりかへる木の葉髪

青空のその先の青神の旅

冬霞白の世界の白深め




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第24回 日本伝統俳句協会賞佳作
第1席 「田の神」    中谷まもる
第2席 「四時一束」  浜崎素粒子
第3席 「虫浄土」     能美顕之
第4席 「花 筵」      山本素竹
第5席 「法 廷」      森本添水


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