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第21回 日本伝統俳句協会賞
「水の声」 山田佳乃

降り惑ふひとひらづつに雪の性

夜半の風銀の薄氷仕上げをり

雪解水より始まりし地の鼓動

片栗の花聴いてゐる水の声

約束は小さき菫の花のごと

空つぽのショーウィンドウ春の雨

寄居蟲の爪先立ちや遠き舟

蝌蚪透けて僅かばかりの臟を持ち

トロ箱に涙目光る桜鯛

矢車に雨ころころと走りけり

蛍の微かな気配草の闇

夏草や岩は津波の跡留め

岩礁に散る飛沫より虹生まれ

日焼して水玉模様よく似合ふ

映る雲掠めて泳ぐ金魚かな


白玉の影まで甘し京町屋

路地曲がり片陰細る石畳

磴一歩づつ秋冷の影つれて

観音の千手伸び来る秋灯

鈴虫や月のうさぎの眠る頃

眠る子の指先月に濡れてをり

水澄むや富士山頂の星あかり

三日月の崩れてゆきし海の果

瓢の笛吹けば昨日の風の音

そぞろ寒素顔のままの日本髪

天狗ゐる魔王ゐる山薄紅葉

足跡に水溜りゐる刈田かな

初雪やローストビーフ焼きあがる

黒髪に編み込んでゆく冬日かな

一滴の水の流転や去年今年




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第21回 日本伝統俳句協会新人賞
「Go,Hitch,Go!」 阪西敦子

雲見れば島動きたる五月かな

あぢさゐの囲む何にもなき広場

少し居て帰つてゆきし螢かな

夏痩の体長々水通る

金魚揺れべつの金魚の現れし

秋の灯や吾が影いつも汝に触れて

秋風や海に出づれば海の色

一歩づつ逃げてをるなり稲雀

口笛を鮒に喰はれてそぞろ寒

秋雨や紫煙くまなき戸を入る

次の世の我かも知れず蝗食ふ

帰り花揺るるため人揺らすため

見送りし十一月の終電車

みな同じ夢を見てゐる浮寝鳥

冬帝や曲がるたび道狭くなる


白壁に出て焼藷の匂ひかな

日なたぼこのどこかをいつも風通る

行く年の浮かびてゐたる湯の面かな

初場所の酔ひといふもの七色に

降る雪や口ついて出るアヴェ・マリア

少年のやうに落ちたる雪しづり

クリムトは楽しからずや春を待つ

春寒の影を育ててゐる巨木

日の青さ水の青さよ春の風邪

ひらがなの多き街並鳥帰る

ふらここや幼馴染と揺れ揃ふ

春風の寝言のやうな舫ひ綱

桜蘂降る地の濡れてゆく間にも

男みな眠りし春の列車かな

読みさしに読みさし重ね春の暮



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