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月波会のこと


 事務局長の坊城でございます。事務局では隔月で「月波会」という句会をしているのでございます。月並俳句ならぬ美しい月の金波銀波の波を俳句にしようではないかという趣旨でこの会をはじめました。メンバーのだいたいは事務局勤務の俳人が中心です。

 普段は絶滅季題を兼題として俳句を持ち寄っております。ちなみに今回のお題は「覆面」。ええっと思われる方も多いでしょう。かつて覆面という季題があったのです。覆面といっても今の歳時記にある「頬被り」などとはちょっとニュアンスが異なりますか。江戸時代の路地の暗闇に立つ覆面の素浪人、あるいは夜鷹といったところでしょうか。むろん現代の防寒用の覆面のことを言っても良いと思われます。
 さて、今回はゲストとして現俳壇のスーパースターのお二人をお呼びしました。いわゆる流派は違えども、そんなことを言っている場合ではない素晴らしい俳人の方であります。 お一人は『街』主宰で加藤秋邨門でいらっしゃいます今井 聖様。苦み走った男前で、現在の俳句のいわばミックジャガーとも。伝統と革新を旗印にいんちき俳人や編集者をめった斬る覆面の怪人、いや、世直し金さんなのであります。
 もうおひと方は『鹿火屋』『ににん』の土肥あき子様。西太后の生まれかわりともよばれる俳壇随一の美人。その流し目を見た俳人はみな石になってしまいます。舌鋒もするどく、伝統俳句を語らせても、艶話を語らせても超絶の若手。普段の香水は「クマツヅラ」の香りだそうです。
 以下、当日の選者の作品と特選でございます。どうぞご覧あれ。

今井 聖
  夕焼に浸して大鮟鱇吊す  
  覆面をして往診の獣医たり  
  覆面の六年生が引率す  
◇特選
  川風に覆面の顔なほちぢむ ちぐさ  
  衰へぬ棘もあらはの枯茨 すずこ  
  管制官交代海に冬満月 あき子  


土肥 あき子
  管制官交代海に冬満月  
  覆面のなかの両目が動きけり  
  月冴えて音階少しづつ狂ふ  
◇特選
  覆面の北緯三十度の漁場 くにひこ  
  覆面をして往診の獣医たり  
  空膨らませ一斉に木の葉散る やすこ  


坊城 俊樹
  覆面の煙の如く立ちにけり  
  覆面の鼻筋にある殺意かな  
  覆面を追ふ覆面が覆面が  
◇特選
  覆面を結界として娑婆の風 くにひこ  
  夕焼に浸して大鮟鱇吊す  
  覆面の父教室に入り来る  




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