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第16回 日本伝統俳句協会賞
「花一日ひとひ」 今井 肖子

昨夜の雨花の匂ひのまた新た

暁の花に大きく鴉来る

朝靄に一樹の色を置く桜

日当りて透きとほりゆく朝桜

花の影花に映りて揺るヽかな

日かげりて桜はひといろになりぬ

昼の月桜を照らすこともなく

花の色光の色となりゆける

映りつヽ水にとけゆく花の影

その幹に溜めし力がすべて花

さくら今最後の一花開きけり

花に立ち花を仰ぎて花に問ふ

満開の桜の色の褪せしとも

暮れ初むる花より風の生れけり

風よりも早き落花の突然に


花の風花より生れ花に消え

ためいきの中に散り来る桜かな

指先にふるヽ落花のなめらかさ

花吹雪大地に吸はれゆきにけり

磴上る落花の風に逆らひて

花満ちし枝に夕日の沈みゆく

月上げていよいよ花の闇となる

月光の青満開の花の紅

この月と花の時間を分かち合ふ

花も亦月を照らしてをりにけり

時を止め夜の桜は呼吸する

群青の夜の深みゆく花明り

花に酔ひ花に疲れて眠りけり

昼となく夜となく花散りつづく

花散りていつもの窓でありにけり




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第16回 日本伝統俳句協会新人賞
「授りて」 奥村 里

吾子の事願へば星の流れけり

あきらめてゐし子授る葉月かな

予感今実感となり天高し

爽やかに身籠りたるを夫に告げ

来年は吾子と見るはず牽牛花

母子手帳抱きしベンチ小鳥来る

新しき命の風や秋桜

身籠りて小春日和のなほ優し

胎動を感じて今宵虫の宿

胎内の子に励まされ夜学かな

予定日の花丸印初暦

胎内の吾子に語りて去年今年

母になる緊張ありて初明り

出産の予定日記す年賀状

新しき命とともに種を蒔く


検診の結果良好花ミモザ

ベビーベッド置かれし部屋や木の芽風

入院の準備楽しく大掃除

出産の不安忘れて初桜

胎動の感触に似て袋角

更衣男児か女児かまだ知らず

出産を待ちゐる日々や若葉雨

子供の日子の存在に感謝して

胎内の吾子は早起き明易し

分身にめぐり逢ふ今日五月晴

母となる決意新たに髪洗ふ

吾が胸に眠りし吾子や麦の秋

乳を呑む生きる力や風薫る

虹立ちて吾子の未来の始まりぬ

母となる願ひ叶ひし蛍の夜



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