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| 特選 |
| 清記番号 | |
| 5 | 雑巾の針目不揃い一葉忌 | 碧蓮 |
- 一葉の字は達筆だ。生きざまも折り目正しい。お札にもなったあの面持も端正で、襟を正したような背筋も想像される。しかし、彼女の人生は、不幸が襲い、市井に埋もれて、女家長の役目をひっそり果たしていた。雑巾の縫い目が不揃いなところが、そういう一葉の人生とどこか重なる。冷え冷えとした時期の忌日。端正な人に「不揃いの針目」の「雑巾」のような人生があるから、あの名文の数々がある。
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| 138 | どちらとも思ひあぐねて小春かな | 思案橋 紅鳴 |
- 一大事の決断に迷っているのではない。時間をかけて迷っているわけでもない。メニューに迷ったり、道順に迷ったり、そんな程度の迷いなのだろう。少し忙しなくて、少し追い立てられるような。でもちょっとほっとできる。小春とはそんな感じだ。この微妙なところ、瑣事に迷える余裕が、この季題の新しい本意ではなかろうか。
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| 660 | 而して落葉降りつむ齢また | 松風子 |
- 何が何してどうなった。俳句では一番詠んではいけないパターンだ。しかしいきなり「而して」と改まって詠まれると、いろいろあった末また落葉の季節が来た、繰り返しの感が湧いてくる。こうしていったい何度落葉を見てきただろう。ふとそんな感慨に囚われる。深刻に振り返っているのではない。落葉の坦々と時を刻む感覚に、自分の時を重ねる「気分」を軽く詠んだのだ。
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| 佳作 |
| 清記番号 | |
| 89 | 息白く内緒話の洩れてをり | 野田ゆたか |
| 199 | 片側にばかり石蕗咲く切通し | 松村洗耳 |
| 290 | 極月の松は古針を払ひをり | 玲 |
| 485 | つまらなくなれば手袋して黙す | 重田朝歩 |
| 567 | 悴める胸をすべりてネックレス | 有季野菜 |
| 611 | 悴みし手に鍵穴の定まらず | いずみ |
| 758 | 御火焚や饅頭食へと権禰宜が | 前川おとじ |
| 771 | 告白は白息なして吐かれけり | 松風子 |
| 791 | アンテナのてっぺんが好き寒鴉 | 撫子 |
| 863 | 廃校の鉄棒ちじむ冬の月 | 剛一 |
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| 特選 |
| 清記番号 | |
| 506 | 刑務所の塀のなかより風花す | 青井 正行 |
- 風花が舞うのはいつも山の方からのような気がする。それは、荒涼とした平野に居るとき。刑務所もそういう大地に建っている。しかし、その中から風花がやってくる。遠い山から来たただの風花とは違う何か隔絶された空間からの風花なのである。
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| 546 | 冬日出づ荒ぶる雲の小洞より | 安田豆作 |
- 冬の日が怒濤のようにあらぶる灰色で鈍色の流動する雲から現れた。渦潮の目のような小さな洞が見えたその一瞬に日が射し込んできた。横山大観の絵のような壮大なる日本画の日輪と思った。
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| 485 | つまらなくなれば手袋して黙す | 重田朝歩 |
- つまらなくなる原因と、手袋をする因果関係はとくにない。しかし、自分の殻に閉じこもって防寒し防御する心持ちはわかる。そして、人は黙ってしまう。つまらないものが、手袋の中の手に触れないように人は黙すのである。
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| 佳作 |
| 清記番号 | |
| 358 | 木の葉髪解いて女でありにけり | 持永 真理子 |
| 67 | 白息を航路のごとく通学児 | ゆう裕 |
| 127 | 冗談の通じぬ人とおでん鍋 | 思案橋 紅鳴 |
| 87 | 皇后の形ばかりの冬帽子 | 英世 |
| 567 | 悴める胸をすべりてネックレス | 有季野菜 |
| 502 | 手のひらの大綿の青確かむる | 平一兵 |
| 609 | 売る気なく煙草燻らし暦売る | 今村征一 |
| 483 | 新しい落葉や古い落葉かな | 三だる |
| 202 | 解せぬことなれど師走の出来心 | 誠山 |
| 339 | 御火焚や小さき灯揺るる先斗町 | 前川おとじ |
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| 特選 |
| 清記番号 | |
| 473 | 古井戸の底に水あり月冴ゆる | よし造 |
- 昭和の中頃までは、田舎の裏庭に大抵井戸があった。夏は西瓜を冷やしたり、打ち水をするために、カラカラと水を汲みあげたり・・・・
平成の昨今、古井戸が残っていることが珍しい。大抵は空井戸であるが。 しかし、作者が古井戸を覗いたら意外にも底に水があった。冴えた月の明りで白々とした水が。 その美しさに驚くとともに、静かな、尖った、月夜の空気が作者を包んだのであろう。
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| 485 | つまらなくなれば手袋して黙す | 重田朝歩 |
- 人生時々、つまらない・・・・と思う。
そしてどうしょうもなくつまらなくなる時がある。 そんな時は冷たくなった手に手袋をはめて、人の輪から離れるのが一番かもしれない。 黙って人の姿を見ているのが一番かも知れない。 手袋を詠んだ心情句として、しみじみとした思いが伝わってくる。
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| 426 | 作りたる注連に埋もれて注連つくり | 桔梗 |
- お正月に向けて、農家の納屋で注連縄を作っているのであろう。注連縄を作って農家の副収入とするのであろう。
注連縄が一つ出来上がるごとに積み上げ、最後にはその中に埋もれてしまうほどなのである。それは、納屋中の新藁の匂いの中に埋もれることでもある。 お正月も近い。黙々と注連作りに励む、ごつい手が見えてくる。
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| 佳作 |
| 清記番号 | |
| 93 | 訪へばピアノの止みぬ石蕗の花 | 丹後縮緬 |
| 181 | 年用意夫に託して入院す | 末廣 紀惠子 |
| 199 | 片側にばかり石蕗咲く切通し | 松村洗耳 |
| 251 | 江戸小紋晒す町川冬霞 | 青井 正行 |
| 296 | 寒鰤に出刃包丁の重さかな | よしほ |
| 707 | 許さるる敵討ちあり冬桜 | 誠山 |
| 572 | 村中の噂話を聞く炬燵 | 丹後縮緬 |
| 657 | 石舞台ぬらし大和の初しぐれ | 喜柊 |
| 812 | しぐるるや衣を濡らす山頭火 | 黒船 |
| 865 | 咳の追ひかけて来る帰り道 | 思案橋 紅鳴 |
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